【人間作業モデル】MOHOSTとMOHO-ExpLOR どう使い分ける? -重症心身障害児(者)施設での活用-

人間作業モデルのスクリーニング評価として、一般的にMOHOSTが活用されます。

以前、重症心身障害児(者)施設ではどの評価を使う?という記事で、MOHOST・MOHO-ExpLOR・SCOPEの使い分けについて考えました。

その時の結論は「まずMOHO-ExpLOR、不都合があればMOHOST(子どもの場合はSCOPE)」でした。

でも、漠然と「まずMOHO-ExpLOR」と感じてはいたものの、どのような不都合があればMOHOSTを使えばよいのかわからない…。そもそも、MOHO-ExpLORとMOHOSTってどう違うの?

これは調べてはっきりさせようではありませんか!

MOHOSTとMOHO-ExpLORの共通点

まず、MOHOSTとMOHO-ExpLORの共通点を考えてみます。

MOHOSTは作業参加を評定し…作業への動機づけ、作業のパターン、コミュニケーションと交流技能、処理技能、運動技能、環境…という領域を、上のように、身辺処理、生産性、余暇の関係の中で考えなければならない手段である。

MOHOSTマニュアル p10

MOHO-ExpLORは、MOHOの大多数の概念に関する情報を収集して、作業療法士にある人の作業機能状態の概要を得ることをもたらし、作業療法士が評定するツールであるという点で、MOHOSTと類似している。

キールホフナーの人間作業モデル p365

MOHOSTとMOHO-ExpLORはやっぱり似ているんです。

MOHOSTとMOHO-ExpLORの違い

では、どのような点が違うのでしょうか?

想定される対象者の違い

それぞれの評価は、どのような対象者を想定しているのでしょうか?

①MOHOST

私たちは、OTRが機能状態のレベルがあまりにも低く過ぎるクライアントに対して、意志の概念を適用することはできないとすることがしばしばある。これは自己を語り、自己主張をすることが最もできないクライアントこそが、意志の注意深い評価を最も必要とすることから、常に私たちを当惑させる。クライアント中心性は、協業の中で、言語化ができず、積極的ではないクライアントに拡大すべきである。

MOHOSTマニュアルp7

MOHOSTは、自分の作業ニーズを明らかにすることができないクライアントにうまく使うことができる

MOHOSTマニュアル p7

MOHOSTの客観的な焦点は、理想的には、クライアント中心の実践が最も困難であり、長い面接に耐えることができないクライアントに使う時に、特に価値がある。

MOHOSTマニュアル p21

ここからMOHOSTは、「自分の作業ニーズを明らかにすることができない」「協業に積極的ではない」「長い面接が難しい」などのクライアントも含め、幅広く実施できそうだと言えます。

MOHO-ExpLORは、ある人の遂行や参加に重度な障害がある場合にMOHOSTの代わりとなる評価法を提供するために作られた。

キールホフナーの人間作業モデル p365

②MOHO-ExpLOR

MOHOSTとSCOPEは一般の人々の作業ニーズを評価する時に用いられ、MOHOSTは青年、成人、老人に適しており、SCOPEは小児と青年に適している。一方、MOHO-ExpLORは作業参加が重度に障害されている青年、成人、高齢者に適している。

キールホフナーの人間作業モデル p357

MOHOSTは、ある程度の根底を成す遂行能力を仮定しています。それはいくつかの能力が重度の学習障害を持つ人を評定するのは困難であることを意味します。

MOHO-ExpLORマニュアル p38

※MOHO-ExpLORマニュアルp37に 重度の学習障害(=「知的障害」あるいは「精神遅滞」)という注釈あり

つまり、「MOHOSTは一般的に想定される多くの対象者に使用できる。ただしある程度の能力があることが前提」とされています。遂行や参加が重度に障害されていたり、重度の知的障害や精神発達遅滞がある対象者にはMOHOSTでの評価が困難な場合がある=MOHO-ExpLORの方が適していると言えます。

遂行や参加に重度な障害があるとは? 

【MOHO-ExpLOR】「複雑なニーズ」について考える(人間作業モデル)をご覧ください

評価内容の違い

評価はどちらも「作業への動機づけ(意志)」「習慣化」「コミュニケーションと交流技能」「処理技能」「運動技能」で構成されています。

MOHOSTMOHO-ExpLOR
作業への動機づけ
(意志)
自分の能力と効力性の認識
自分が行うことに重要さや意味、楽しみや満足を見出すか
日常生活の中で、探索したり、従事したりできるかどうか
選択し、好みを示し、ある範囲から選ぶことができるかどうか
作業のパターン(習慣化)日常生活を組織立てて生産的な日課のバランスを整える
多様な役割を明らかにし、責任を果たす
どのように行動や習慣のパターンを維持するか
物事を行う新しい方法を学ぶことによって、どのように適応するか
責任への気づきと所属の感覚
コミュニケーションと
交流技能
適切な言語的・非言語的コミュニケーションをとれる
他者と良好な関係を築く
音声や非言語的表現で自分の考えを示すことができるかどうか
他人に気づくこと、他人との間で喜びや幸せを示すこと
暗黙な、または明瞭な社会的役割に従って行動する
処理技能
時間の中で動作を論理的に配列
適切な道具や材料を選択・用いる
問題を克服するために遂行を適応させる
対象物をどのように使い、何をすべきか知っているかどうか
時間と空間をうまく扱う能力
進行中の活動に注意を払い、応答することに集中すること、
物に対する知識と対象物の使用
運動技能自分の体や自分の環境内の物を動かす持久力
活動の中で対象物をどのように用い、何をすべきかを知っているかどうか
効率よく作業を進める能力
環境物理的空間、物理的資源、社会的集団、作業要求作業の動機付け(意志)、作業のパターン(習慣化)、コミュニケーションと交流技能、処理技能、運動技能のそれぞれの環境要因(物理的空間・物理的資源・社会的集団・作業要求)

この中で、環境の評価項目数が違います。MOHOSTは4項目に対して、MOHO-ExpLOR15項目!

MOHO-ExpLORの使用を想定される「遂行や参加が重度に障害されていたり、重度の知的障害や精神発達遅滞がある対象者」は、暮らしていくうえで何らかのサポートが必要です。例えば施設に入所している場合、設備によって、スタッフによって、遂行や参加に大きく影響することがあります。つまり、環境要因の評価が大切です。

MOHO-ExpLOR介入マニュアルは、その人の作業参加が非常に損なわれた時に、その人の環境の介入を構築するために作られたものである。

キールホフナーの人間作業モデル p209

MOHO-ExpLORマニュアルは、全体的な発達レベルの変化が、本来は探索的であると期待されている人々に、この段階の介入を支援するために作られた。

キールホフナーの人間作業モデル p209

環境への介入が重要になる場合はMOHO-ExpLORを使うと、変化を評価しやすいかも!

また、意志には探索・有能性・達成という3つのレベルがあり、探索レベルに該当する方にはMOHO-ExpLORが使いやすそうです。

まとめ

・MOHOSTは幅広い対象者に対して使うことができるスクリーニング評価

・暮らしていくうえで何らかのサポートが必要で、環境への介入が重要になる場合はMOHO-ExpLOR

重症心身障害児(者)施設に入所している方にはMOHO-ExpLORを使って環境面の評価もする

今後は自信をもってMOHO-ExpLORを使っていきます!

参考文献

山田孝(監訳):人間作業モデルスクリーニングツール(MOHOST)使用者手引書 改訂訳

山田孝(監訳):人間作業モデル探索レベル成果評定法使用者手引(MOHO-ExpLOR)

山田孝(監訳):キールホフナーの人間作業モデル ー理論と応用ー 改訂第5版

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