【臨床実習指導】2024年度の実習前にやりたいこと

昨年度、作業療法学生の臨床実習指導をCCSで行いました。私の勤める施設では2020年度からCCSで指導を行っています。手探りの部分もとても多いです。実際に指導をする中で、CCSの良かった点と今後検討が必要だと感じた点を挙げます。これから重症心身障害児(者)施設で作業療法の実習指導をする方の参考になれば幸いです。

私は今勤めている職場しか知らないため、施設によって、また違う分野では当てはまらない部分があるかもしれませんので、ご了承下さい。

今回工夫して良かった点

課題が少ないので実習生の睡眠時間を確保できる

CCSでは基本的にレポート課題は出しません。1日の学習時間は実習と家庭学習を合わせて1日9時間以内、週に45時間以内と定められています。「家に帰ってレポートに追われて睡眠時間が2~3時間」ということはないんです!しっかり睡眠をとって、翌日の実習に備えられます。

私の職場では通常の勤務時間は1日8.5時間です。ある養成校の実習指導者会議で「8.5時間は繰り上げて9時間とみなす」という見解が示されました。あら大変。ということは、実習時間中に課題も全て終わらせられるスケジュールを組まないと。

悩んでいる実習指導者
悩んでいる実習指導者

でも、自分で評価しないで、レポートも書かないで大丈夫なの?

働き始めて困るんじゃない?

レポートを書かなくても、臨床思考過程の指導はできます!

「養成校で専門的な知識を身につける」と「実際の対象者に評価・計画立案・介入を行う」の間には、とてもとても長い距離があります。教科書的な知識だけでは難しいからこそ、その間に臨床実習があるのだと考えます。

養成校で学んできた知識・技術と、実習指導者の実際のアプローチを重ねてみることで、疑問が生まれたり腑に落ちたり…。経験値が増えることで理解できることも増えるでしょう。臨床に出るまでの、経験を積む場なのではないでしょうか。

もちろん、見学→模倣→実施と段階を踏んでいく中で、指導方法は変わります。始めは実習指導者の説明(インプット)が多いですが、徐々に実習生の考えを引き出していく(アウトプット)割合が増えてきます。実習生が1人で評価しなくても、レポート書かなくても、しっかり育っていけます。

そのためには、指導者の指導力が問われます!

私も含め、現在臨床実習指導をする人の多くは、従来型の症例担当制で臨床実習を経験しているでしょう。でも、自分が受けてきた教育が正しいという根拠はありません。自分が経験してきた方法なら、同じように指導できるというだけです。

臨床実習の到達目標

臨床実習の到達目標とは、臨床実習指導者の指導・監督のもとで、典型的な障害特性を呈する対象者に対して、作業療法士としての

倫理観や基本的態度を身につける

許容される臨床技能を実践できる

臨床実習指導者の作業療法思考過程を説明し、作業療法の計画立案ができる

ことである。

作業療法臨床実習指針(2018)より

実習指導を行うためには「指導方法」を学ぶ必要があります。そのために、臨床実習指導者講習会があります。

対象者が不要な評価や治療を受ける必要がない

従来の実習では、学生が評価や治療方法を考え、指導者の許可をもらって対象者に実施していました。しかし、その中には対象者には不要と思われるものもありました(関節可動域には問題がないけど関節可動域テストをする、など)。しかし、「実習だからやってごらん」と学生に実施してもらうことがありました。しかし、実習といえども本来は対象者の治療の場であり、対象者の不利益になることはしてはいけません。不要な検査や治療を行うというのは、対象者が本来受けられるはずの適切な医療を受ける権利を奪うことになってしまいます。

レポート指導がないので実習指導にかかる時間が短い

CCSでのフィードバックは、基本的に対象者の訓練中(内容によってはその直後)に口頭で行います。学生の理解度を確認し、補足を伝えたりします。レポート指導のために終業後に時間をとることはありません。レポートを読むにも時間がかかるので、その時間がなくなることで負担が軽くなるのではないでしょうか?

レポート指導なのか、日本語指導なのか…ということ、よくありますよね。

自分が提供している作業療法を振り返ることができる

理解していることでも、人に説明しようとしたらうまくできない、ということはないでしょうか?実習指導も同じです。実習生に説明をすることで、自分の頭も整理されます。

今回実習指導を行って、CCSはきちんと行えばとても効果的だと感じました。そのためには、臨床実習指導者がきちんと臨床実習指導者講習を受け、教育理論や指導方法について理解を深めておくことが必須です。実習の質は指導者の質で決まります

2024年度の実習受け入れまでにすること(目標)

MTDLPについて理解する

実習指導にMTDLPを活用する、という話をよく聞きます。でも私、恥ずかしながらよく理解していません。基礎講習は受講しましたが、いざ使おうとするとなんだかうまくいかず…。そもそも、重心施設の利用者の多くは、本人のニーズをとらえるところが難しい!

しかし、実習指導を行う中で、私が何を考えてどんな流れで介入しているのか、を伝えるには型があった方がいいなと感じ、「それがMTDLPか」と気づきました。

マニュアルも購入しました。次の実習指導に向けてMTDLPを理解し、実習指導にどう組み込むかを考えていきます。

実習生の評価基準を作成する

実習中に、実習生の中間評価・最終評価を行います。しかし、その基準は明確でないことも多く評価をつける時に悩むこともあります。

例えば、「選択した評価手段の目的を説明することができる」は、いつも成績をつける時になってから、「説明してもらってないな…」と反省します。説明してもらったとしても、どの程度の説明ができていればどの評価なのか、明確に基準を決めていません。

具体的に「〇〇について説明できる」「△△について説明できる」だったり、それぞれのキーワードを設定したり、「そのうち〇個説明できたらB判定」のように、誰が評価しても同じになるように、そして実習生にも何が求められているのかわかるような基準が必要なのではないかと考えています。

先日、臨床実習指導者実践研修(日本作業療法士協会 主催)を受講しました。その中で、ルーブリック評価の作成方法を学びました。上記のような基準を明確にした評価をすることができます。興味がある方はぜひ受講してみてください。

チェックリストを作成する

CCSではチェックリストを使用して、その日に学んだことを学生と指導者が一緒に確認します。大体養成校ごとにチェックリストを作成してありますが「発達分野」のチェックリストだと、お子さん、軽度発達障害、などを想定した項目が多く、1日の終わりに学生とチェックリストをつける時に「当てはまる項目が無い…」ということもしばしば。当施設で受け入れている養成校では、「施設独自のチェックリストを使ってもよい」とのことだったので、今年度は独自のチェックリストを作成して使ってみました。今までよりはチェックをつけるのに悩むことが少なくなりました。MTDLPの活用を視野に入れると、チェックリストはICFの分類に沿った方がわかりやすいかな?など改良を重ねています。

フィードバックを充実させる

介入前後や1日の終わりにはフィードバックの時間を設けています。しかし、フィードバックに時間がかかりすぎているな…という気もしていました。実習指導に関する他施設の取り組みを聞く機会がありましたが、「介入後には5分、1日の終わりには15分(長くても30分)」という施設が多く、驚きました。

フィードバックの時間が長ければいいわけではないことはわかります。「介入後には5分、1日の終わりには15分(長くても30分)」を実現するには、介入ポイント・指導のポイントをしぼって的確に伝える必要があります。

見学レポートを簡略化する

訓練見学をする前にいろいろ説明はしているものの、その後のレポートでは対象者の反応しか書かれておらず、目的や、OTの関わり方など、伝えようとしていることがうまく伝わらないことがおおいです。また、重心施設は初めてだし授業もほとんどなかったという実習生も多く、おそらく何を書けばいいのか(特に実習開始直後は)困っているんだろうなあと思っていました。

そこで、それらを解決するために見学レポートのフォームを作成しようと考えています。内容は、介入の目的、事前情報(他職種・カルテ等)、予定した内容、実際の内容(OTの関わり・対象者の反応)、次回の予定、疑問点、など。「予定した内容」までは介入までに記入することで、見学場面に集中し、指導者も伝え忘れが減るのではないか、と考えています。

重心施設でCCSを行うために、今後検討が必要な点

CCSに問題があるというわけではなく、重心施設でCCSを行うために検討が必要だと感じたことです。

重心における「典型的な障害特性」とは何か?

上にも書きましたが、臨床実習の到達目標として以下のように定められています。

臨床実習の到達目標

臨床実習の到達目標とは、臨床実習指導者の指導・監督のもとで、典型的な障害特性を呈する対象者に対して、作業療法士としての

倫理観や基本的態度を身につける

許容される臨床技能を実践できる

臨床実習指導者の作業療法思考過程を説明し、作業療法の計画立案ができる

ことである。

作業療法臨床実習指針(2018)より

重症心身障害児(者)施設に入所されている方の障害像は様々です。「典型的な障害特性」として何を挙げるか。そこを指導者側でしっかり考えておかなくてはいけないのかなと思いました。複数の指導者で関わる際には、それぞれでどういう部分を指導するのかを分担するとよいでしょう。

まとめ CCSでの実習指導、良かったですよ!

これからCCSでの実習指導が主流になってくるとは思いますが、養成施設や実習施設によっても導入の割合は異なるようです。養成施設によっては積極的に導入をすすめ、実習施設にCCSについての講義をしてくれるところもあるようです。

実習指導者の要件で研修会の受講が必須になったことで、元々実習指導に消極的だった人は受講せずに実習指導からフェイドアウト…という現象も起きています。

CCSでの実習指導は、レポート指導がないことで、経験を積むための実習ができると感じました。実習指導者の指導力・臨床力(←という言い方はあるのか?)に大きく左右されるので、自分がスキルアップするためのモチベーションにもなります。CCSでの実習指導、おすすめですよ!

***臨床実習指導に興味がある方におすすめの記事!***

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です