私は、「重症心身障害児(者)施設」というところで働いています。一般にはあまりなじみがないと思うので、基本的なことをまとめてみました。
重症心身障害児(者)の定義
重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態を重症心身障害といい、その状態にある子どもを重症心身障害児といいます。さらに成人した重症心身障害児を含めて重症心身障害児(者)と呼ぶことに定めています。
社会福祉法人 全国重症心身障害児(者)を守る会
重症心身障害児(者)とは ~いのちゆたかに~
これは、医学的な診断名ではなく、福祉サービスを受けるなど行政上の措置を行うための定義です。児童福祉法上の概念で、18歳までにこのような状態になった方を指します。成人になった方も含め、全国で約43,000人いると推定されています。
重症心身障害の主な原因
重症心身障害の発生原因は様々で、中には原因不明の場合もあります。次のようなものが原因となることが多いです。
- 出生前の原因:胎内感染症、脳奇形、染色体異常など
- 出生時・新生児期の原因:分娩異常、低酸素、極小未熟児、重症仮死産など
- 周産期以後の原因:脳炎などの中枢神経感染症、てんかんなど
医学の進歩によって、年々発生数は減少…とはならず、むしろ増えています。なぜなら、超低出生体重児や重症仮死産などで、今まで救えなかった命を救えるようになり、障害があっても生きられるようになったことが原因だと考えられています。
重症心身障害児(者)の状態像
重症心身障害児(者)の状態像は様々です。
- 姿勢:寝たまま身体を動かすことができない場合もある。
- 食事:誤嚥(食物が気道に入る)する、自分で箸やスプーンを使うことができない場合もある。
- 排泄:排泄の訴えがなくておむつを使用する場合もある。排尿障害や排便障害(便秘)が見られる場合もある。
- 変形:脊柱(背骨)や手足の関節が曲がったりかたまったりする場合もある。
- コミュニケーション:ことばでのやり取りが難しく、表情から感情をくみとって関わることもある。
- 筋緊張:筋肉のコントロールが難しく、自分の体を動かすことができなかったり、違う筋肉が動いてしまうことがある。
- こだわり:特定の感覚(手触り、音、回転、振動など)が好きだったり嫌いだったりして、特定のものに執着することがある。
全てが現れるわけでもなく、程度も様々です。自分の体を動かすのは難しいけど喋れる方もいれば、歩くことはできてコミュニケーションは難しい方もいます。状態がそれほど重くなくても、家庭の事情で施設に入所されている方もいらっしゃいます。
まとめ
私は、作業療法士になるための臨床実習の時に初めて、重症心身障害児(者)施設という存在を知りました。(授業でやったのかもしれないけど…。)
全国で43,000人ということは、人口の0.03%程度です。なかなか身近に感じることは少ないかもしれません。
ここで働くことが、「笑顔の暮らし、笑顔の人生」を考える理由の1つにもなっています。作業療法士として何ができるのか、これからも悩み、考え、発信していきたいと思います。
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