今年度、作業療法学生の臨床実習指導をCCSで行いました。実際に指導をする中で、CCSの良かった点と今後検討が必要だと感じた点を挙げます。これから重症心身障害児(者)施設で作業療法の実習指導をする方の参考になれば幸いです。
私は今勤めている職場しか知らないため、施設によって、また違う分野では当てはまらない部分があるかもしれませんので、ご了承下さい。
CCSで指導をして良かった点
実習生のメリット
CCSでは「見学→模倣→実施」という段階で指導を行います。実習生は指導者の行う作業療法の場面に同席して学んでいきます。まずは見学で、指導者の言動の理由や根拠を聞いて学びます。
実習初日に指導者が「じゃあ、評価してみて」と言うことはありません。対象者に、どのような目的でどのようなアプローチを行っているのか、指導者の頭の中を伝えていきます。その時は実習生が理解できているかを確認しながら、伝え方や伝える量を調整する必要があります。そこは指導者の指導力が問われます。実習生がどれだけ理解できたかは、指導者がどれだけ上手に伝えることができたかにかかってきます。
CCSでは基本的にレポート課題は出しません。1日の学習時間は実習と家庭学習を合わせて1日9時間以内、週に45時間以内と定められています。「家に帰ってレポートに追われて睡眠時間が2~3時間」ということはないんです!しっかり睡眠をとって、翌日の実習に備えられます。
でも、自分で評価しないで、レポートも書かないで大丈夫なの?
働き始めて困るんじゃない?
私も含め、現在臨床実習指導をする人の多くは、従来型の症例担当制で臨床実習を経験しているでしょう。でも、自分が受けてきた教育が正しいという根拠はありません。自分が経験してきた方法なら、同じように指導できるというだけです。
臨床実習の到達目標とは、臨床実習指導者の指導・監督のもとで、典型的な障害特性を呈する対象者に対して、作業療法士としての
①倫理観や基本的態度を身につける
②許容される臨床技能を実践できる
③臨床実習指導者の作業療法思考過程を説明し、作業療法の計画立案ができる
ことである。
「養成校で専門的な知識を身につける」と「実際の対象者に評価・計画立案・介入を行う」の間には、とてもとても長い距離があります。教科書的な知識だけでは難しいからこそ、その間に臨床実習があるのだと考えます。
養成校で学んできた知識・技術と、実習指導者の実際のアプローチを重ねてみることで、疑問が生まれたり腑に落ちたり…。経験値が増えることで理解できることも増えるでしょう。臨床に出るまでの、経験を積む場なのではないでしょうか。
もちろん、見学→模倣→実施と段階を踏んでいく中で、指導方法は変わります。始めは実習指導者の説明(インプット)が多いですが、徐々に実習生の考えを引き出していく(アウトプット)割合が増えてきます。実習生が1人で評価しなくても、レポート書かなくても、しっかり育っていけます。
そのためには、指導者の指導力が問われます!
対象者のメリット
今までの実習では、学生が評価や治療方法を考え、指導者の許可をもらって対象者に実施していました。しかし、その中には対象者には不要と思われるものもありました(関節可動域には問題がないけど関節可動域テストをする、など)。しかし、「実習だからやってごらん」と学生に実施してもらうことがありました。しかし、実習といえども本来は対象者の治療の場であり、対象者の不利益になることはしてはいけません。不要な検査や治療を行うというのは、対象者が本来受けられるはずの適切な医療を受ける権利を奪うことになってしまいます。
実習指導者のメリット
CCSでのフィードバックは、基本的に対象者の訓練中(内容によってはその直後)に口頭で行います。学生の理解度を確認し、補足を伝えたりします。レポート指導のために終業後に時間をとることはありません。レポートを読むにも時間がかかるので、その時間がなくなることで負担が軽くなるのではないでしょうか?
レポート指導なのか、日本語指導なのか…ということ、よくありますよね。
理解していることでも、人に説明しようとしたらうまくできない、ということはないでしょうか?実習指導も同じです。実習生に説明をすることで、自分の頭も整理されます。
今回実習指導を行って、CCSはきちんと行えばとても効果的だと感じました。そのためには、臨床実習指導者がきちんと臨床実習指導者講習を受け、教育理論や指導方法について理解を深めておくことが必須です。実習の質は指導者の質で決まります。
重心施設でCCSを行うために、今後検討が必要な点
CCSに問題があるというわけではなく、重心施設でCCSを行うために検討が必要だと感じたことです。
重心における「典型的な障害特性」とは何か?
上にも書きましたが、臨床実習の到達目標として以下のように定められています。
臨床実習の到達目標とは、臨床実習指導者の指導・監督のもとで、典型的な障害特性を呈する対象者に対して、作業療法士としての
①倫理観や基本的態度を身につける
②許容される臨床技能を実践できる
③臨床実習指導者の作業療法思考過程を説明し、作業療法の計画立案ができる
ことである。
重症心身障害児(者)施設に入所されている方の障害像は様々です。「典型的な障害特性」として何を挙げるか。そこを指導者側でしっかり考えておかなくてはいけないのかなと思いました。複数の指導者で関わる際には、それぞれでどういう部分を指導するのかを分担するとよいでしょう。
重心用のチェックリストを作成したい
CCSではチェックリストを使用して、その日に学んだことを学生と指導者が一緒に確認します。まだ統一されたチェックリストがあるわけではなく、養成校・施設が独自に作成したものを使用しています。(私の知る限りでは…。県によっては県士会で作成されたりしているのでしょうか?)
今回は学生が持ってきたチェックリストを使用しました。分野ごとに作成してあり、「発達分野」のチェックリストを使用しました。が、発達分野だとお子さん、軽度発達障害、などを想定した項目が多く、1日の終わりに学生とチェックリストをつける時に「当てはまる項目が無い…」ということもしばしば。実際の業務内容などから、使いやすいチェックリストを作成したいです。養成校で作成…は無さそうなので、チェックリストを作成している重心施設などがあれば情報交換しましょう!(あ、こちらから交換できるものがなかった…)
まとめ CCSでの実習指導、良かったですよ!
これからCCSでの実習指導が主流になってくるとは思いますが、養成施設や実習施設によっても導入の割合は異なるようです。養成施設によっては積極的に導入をすすめ、実習施設にCCSについての講義をしてくれるところもあるようです。
実習指導者の要件で研修会の受講が必須になったことで、元々実習指導に消極的だった人は受講せずに実習指導からフェイドアウト…という現象も起きています。
CCSでの実習指導は、レポート指導がないことで、経験を積むための実習ができると感じました。実習指導者の指導力・臨床力(←という言い方はあるのか?)に大きく左右されるので、自分がスキルアップするためのモチベーションにもなります。CCSでの実習指導、おすすめですよ!
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